高等部泉中央教室
0では割れません.
こんにちは,森山です.
a を b で割る「a ÷ b」という除法は,
a と 1/b を掛ける「a × 1/b」という乗法のことです.
b に対する1/bのことを「bの逆数」と呼びます.
例えば a ÷ b=■ とすると,これは b × ■=a と同義ですから,
a を b で割るという計算「a ÷ b」は,
「bに掛けるとaになる数■を求めること」と同義です.
ところが,四則演算で唯一許されていない処理があります.
それは「0で割る」という計算です.
ある演算子★に対して,演算 a★b を定義できるためには,
「演算 a★b の結果がただ1つに定まる」ことが必要十分です.
これに基づいて,「0で割る」について考えてみましょう.
例えば a ÷ 0=◆ とするなら,これは 0 × ◆ = a と同義なので,
「a ÷ 0」は「0に掛けるとaになる数◆を求めること」と同義なのですが……
そんな◆はただ1つに定まるでしょうか?
例えば a が 0 であれば,0 ÷ 0 =◆ すなわち 0 × ◆ = 0 という式を
成り立たせる数◆を求めることになりますが,
0に何を掛けても結果は0ですから,
◆はどんな数であっても成立してしまいます.
例えば a が 0 以外の数であれば,
( 0 以外の数) ÷ 0 =◆ すなわち 0 × ◆ = ( 0 以外の数) という式を
成り立たせる◆を求めることになりますが,
0に何を掛けても結果は0ですから,
◆はどんな数であったとしてもダメなわけです.
以上から,「0で割る」を実行すると,
① 0 ÷ 0 は,結果がただ1つに定まらない(これを不定と言います).
② (0以外の数) ÷ 0 は,結果が存在しない(これを不能と言います).
のどちらかになってしまうので,「0で割る」演算は定義できないのです.
ということで,数学の世界では0で割ることは許されていません.
冒頭に書いた a ÷ b という演算ですが,この演算が定義されるには,
割る数 b は0ではない という制約が付きまといます.
実は0では割れないことは,初めて割り算を習う小学3年生で勉強しています.
しかし,0では割れないことを強く意識することが,
これまでの数学の問題を解くために役に立った瞬間はおそらくないでしょう.
高校数学ではこのような「演算に対する細やかな制約」を意識する場面が多々あります.
数学は単なる計算ゲームではなく,「定義に基づいた思考」を要求されているのです.
高等部泉中央校 森山 昇平